運負けを減らすアプローチ

構築段階での立ち回りについて聞かれることが多いこと、今後自分の考えを見直すために一度文章として纏めてみることにした。

 

今の環境で分かりやすい例としてザシアンを挙げる。

ザシアンはその性質上追加効果のある技を採用しずらく、上振れ要素が急所に当てるしかない上に、接触技が多いので静電気や炎の体等から下振れの影響を受けやすい。使い方次第では「運負け製造機」なのである。私も恥ずかしながら伝説環境初期には「ザシアンは最終日に運が良い人が勝つ」と思っていた時期もあった。

しかしこれらの要素を考慮してもザシアンが環境トップに君臨し続ける理由は、他を圧倒する種族値や特性、巨獣斬のダイマックスへのダメージ2倍であり、言うなれば常に少し上振れているポケモンなのだ。

そこでザシアンが一番活躍しているタイミングはいつかを考えた。それはダイマックス相手に巨獣斬を撃っている時なのである。当たり前だろと思う方もいるだろうが少し解説させてほしい。前提としてダイマックス技にはステータス関連の追加効果はあるが、火傷や麻痺、怯み等は存在しない。つまりザシアンがダイマックス相手に巨獣斬を撃っている時はお互いの上振れ要素が急所のみでありながら、こちらは常にダメージが2倍の実質急所以上の恩恵を受けているのである。つまり、ザシアンを活躍させやすいのは相手にダイマックス権が残っている序盤だ。

これと同時に最速+剣の舞を持った、後発から通していくザシアンの上振れ要素の少なさにも気が付いた。環境に多いザシアンミラーを制するための最速選択は一見メリットしかないように思えるが、ザシアンがサンダーと多く組まれていることまで考えると聊か疑問が残る。

「最速ザシアンを使って立ち回りは完璧だったのに静電気一発麻痺で相手のザシアンに上を取られて負けた」という旨のツイートをよく見る。その場面だけを見ればたしかにそうかもしれないが、果たして構築としては勝っていたのだろうか。展開を予想すると、最速ザシアンで恐らく剣の舞を積んでいて相手はサンダー+ザシアン、攻撃するだけで勝てるように思えるが、サンダーを倒すためにザシアンはじゃれつくを選択しなければいけない場合、最速ザシアン側の勝率は命中90%を引いてから麻痺しない70%を引かなければいけないため、63%が勝率の上限ということになる。言ってしまえば理想展開を100試合作っても37試合は負けるのだ。そして相手のザシアンが最速であった場合の勝率は31%まで落ちる。

恐らくほとんどのプレイヤーは感覚的にはこのことを理解しているので、分かりやすいところから被弾回数を数えて勝率を逆算する癖をつけるといいかもしれない。

 

以上のことを踏まえて組んだ構築が以下である。アプローチの手段として楽しんで頂きたい。

 

考え方としては可能な限り初手にザシアンを置いて荒らし、後発の珠ミミッキュやアッキサンダーでダイマックスをして詰めていく。初手に置くザシアンは相手のザシアンを抜いている必要が少ないことや相手の珠アタッカーと撃ち合わせるためにHAベース。よく言われている「受かってないんだからザシアンにサンダーを投げるな」問題も、Aに多く振ったザシアンであれば確率的に麻痺は引くものの倒し切れることが多く、麻痺を引かずに倒せた時が上振れとなる。

相手はザシアンを処理した後に後発ダイマックスで崩しに来るが、その展開をウーラオスの気合の襷やミミッキュの化けの皮、耐久振りサンダーで強引に止めテンポを取らせない。ミミッキュやサンダーをダイマックスエースとして後発に置くことで接触や技外しによる下振れを考慮する必要が無く、数値によるごり押しをしやすい。

S16最高2064 役割集中ラオスミミザシアン - 発寒厨の蜻蛉日記

 

ここまでの考えを今の伝説2体環境に落とし込んだのものがザシアン+黒バドレックスとなる。ザシアンの構成を巨獣斬/インファイト/ワイルドボルト/電光石火とすることで序盤での活躍が見込める上に技外しによる下振れが無く、相手のポケモンを疲弊させた後に黒バドレックスを通していく。スイーパーとしての黒バドレックスには技の追加効果としての上振れは存在しないが、相手より先に行動する高火力が急所の試行回数を稼げ、行動させずに倒し切った場合は相手の上振れを許さない。

S27最終33位 壁偽装対面ランドバドザシ - 発寒厨の蜻蛉日記

 

先月S28では更に下振れを減らす手段としてザシアンの代わりにゼルネアスから展開を考えた。特殊技メインのためサンダー等への接触が無く、ムーンフォースの強力な追加効果を期待したが、単体の対応範囲がザシアンに遠く及ばなかったため当初の想定とは少し別の構築になってしまった。

S28最終55位 役割集中ゼルネバド - 発寒厨の蜻蛉日記

 

上記のゼルネアス+黒バドレックスと同時期に考えていた、安定行動による上振れの集大成とも呼べる並びが以下のカイオーガ+ザシアン+アッキサンダーである。基本的な考えとしてはS16の伝説による荒らしからのアッキサンダーの詰めを土台としているが、この構築ではカイオーガの非ダイマックス時の上振れ性能に注目した。カイオーガは熱湯や冷凍ビーム、雷等の通常時に使う技に強力な追加効果があるが、ダイマックスポケモンとして運用されることが多く疑問を感じ、通常運用出来れば安定行動だけで楽に勝てる試合が多いのではないかと考えた。結果として試みはある程度以上達成出来たので、カイオーガを使うのが上手い知り合いに構築を託したところ上位を取ってもらえた。

S28最終22位 匿名ザシオーガ 使用者おろしぽんず - 発寒厨の蜻蛉日記

 

ここまでがS28までの暫定的な考えとなる。

私自身も昔はそうであったので自戒の意味も含むが、「相手の運が良すぎ」と熱くなって終わらせずに落ち着いてから試合展開を見返して、その展開を100回行った時に何試合勝てるのかを考えることで構築の安定感に繋がってくるはずだ。